彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

 100憶の金額を見たジュリーヌは、ふと思い出した。

 樹里が引き取られてきた時、確か優が施設側に大金を支払わないと承諾してくれなかったと話していた事を。

 ジュリーヌも樹里を初めて見た時、この世の人とは思えないほどのかわいさを感じた。
 まるでどこかのお姫様のような樹里に驚いたくらいだった。

 もしかして…。

 ジュリーヌは書類からゆっくりと、宇宙へ視線を移した。


「あの…これを読んでいて、書かれている事が事実であれば。…すごい運命だと思うのですが…」
「そうですね。産まれた時からずっと、運命の糸で結ばれていたのかもしれませんね」

 運命の糸…。
 自分が宗田家の人に助けられたことも、運命だったのだろうか?
 産まれてすぐいなくなってしまった子供がいる、宗田家に何も分からないまま来て。
 実の息子と知らないまま過ごした20年。
 
 宗田家に来た時、楓はちょっと人見知りしていたが、柊はとても笑顔で迎えてくれた。
 別々に暮らすようになっても、柊は時々リッチ―ルヒルズに来てくれていた。
 結婚が決まった時も報告に来てくれて、横領された時も素直に悔しい気持ちを話してくれた。

 樹里が助けてくれてた時は、ジュリーヌの前では涙を流していたくらいだった。

  
「素晴らしい運命ですね。ちょっと、複雑な事も多くありましたが。これで良かったと思います」
「僕もそう思います。樹里ちゃんも、時間はかかるでしょうがきっと解ってくれると思います」

「樹里は人一倍優しくで、傷つきやすい繊細な子です。でも今こうして見ると、樹里は宗田さんに似ていますね。目元なんてそっくりです」
「そう言われると嬉しいです。樹里ちゃんは、僕に似ている事を喜ばないかもしれないけど」

 
 誘拐された2人の子供は、別々の家に引き取られていたが結婚という形で再び本当の家族の下へ戻ってきたようだ。

 100憶で買われたと言われていた樹里だが、100憶の損失を追った柊を助けるために、100憶で結婚を申し込んできた。

 大きなお金が動いたが、これもきっと愛の形なのかもしれない…。

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