取引きは恋愛関係の始まり
「今日の昼に始末した奴が吐いたぞ。お前が犬だってことをな」

ドクドクと心臓が嫌な音を立てる。せっかくシャワーを浴びたというのに冷や汗が頬を伝った。

「それで私をここで始末すると?防犯カメラの映像はあとで回収できるかもしれないけれど、従業員に私たちの姿は見られているわよ」

震える声で私が言うと、「ククッ」とタナトスは笑う。そして私の体をツウッと指でなぞった。

「俺はお前のことを気に入っている。だから殺すのは気が引けるな」

「なら、どうするつもりですか?」

私が訊ねると、突然タナトスに抱き上げられてベッドの上に放り投げられる。私が放り投げられたと自覚する前にタナトスに体の上に乗られ、腕を固定されてしまう。

「取引きをしないか?」

吐息がかかってしまうほど顔を近づけられ、私の胸がドキッと高鳴る。今までこんなことはなかった。今まではただお互いを満たすために触れ合っていたのに今は、まるでーーー。
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