取引きは恋愛関係の始まり

最悪なことに、今日は先ほど電話をしたタナトスと夜に会わなくてはならない。タナトスは勘が鋭く、これまでも何度かスパイの疑いをかけられたため、他の組織の人間に会う時より警戒しなくてはならない。

「お母さん、私を守って……」

未だに震える手で私は机に置かれた写真を手に取る。まだ元気だった母と二人で旅行に行った時に撮った写真だ。組織の人間と会う前は、いつもお守りのようにこの写真に触れる。

『大丈夫。いつでもお母さんはあなたの味方よ。どんなことがあっても守ってみせる』

昔、母に言われた言葉が蘇る。まるで母が今自分に語りかけてくれたみたいだ。

私は微笑み、タナトスと会うための支度を始めた。



金色の長い髪をアイロンで巻き、体のラインがくっきりと見えるセクシーな黒いドレスに身を包む。真っ赤なルージュを唇に引き、胸元にタナトスからもらったブラックダイヤモンドのネックレスをつければ、支度は完了だ。

「今日も完璧ね」