取引きは恋愛関係の始まり
ここで頭のいい人なら疑問に思うんじゃないかしら?何故犯罪組織に一応属しているのに、こんなに目立つ格好をして街中を歩いているのかって。答えは簡単。コソコソしている方が怪しまれることが多いからよ。犯罪組織の人間は普通の人々にうまく紛れて生活をする。そう、怪しまれないためにね。

でも、さすがに一般の客が多く通うような場所で組織のことを話すわけにはいかないから、大通りをしばらく歩いたら裏路地に入る。裏路地を通っていくと、寂れていつ閉店してもおかしくない見た目をしたバーが現れる。私は迷うことなくバーのドアを開けた。ここがいつもタナトスと会う場所だ。

「いらっしゃいませ」

バーに入ると、清潔な衣装に身を包んだバーテンダーが微笑む。見た目は寂れているけど、バーの中はおしゃれで綺麗だ。ここは犯罪組織の人間のためのバーだから、一般人が入ってこないようにわざとこうなっている。

「遅いぞ、ネメシス」

カウンターに腰掛けていた男が立ち上がる。女のものかと思うほど美しく長い黒髪を揺らし、黒いスーツに身を包んだ細身で長身の男。この男がタナトスだ。
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