取引きは恋愛関係の始まり
「申し訳ありません。準備に時間がかかってしまったようです」

私はペコリと頭を下げる。しばらくすると、「とりあえず座れ」とタナトスは私の腕を引いて自分の隣に座らせた。

「いつものを頼む」

バーテンダーにどこか気怠そうに注文するタナトスは、百人いれば百人が「かっこいい」と言うであろう容姿の持ち主だ。でも、この華やかな顔立ちで恐ろしいテロ行為や殺人を繰り返しているため、寒気が走りそうになる。

「お待たせしました」

バーテンダーがそう言い、私の前にカクテルを置く。ホーセズネックというカクテルだ。レモンの皮が丸ごとガラスに入ったブランデーベースのカクテルである。

「タナトス、ありがとうございます」

「フン。ありがたく飲めよ」

バーで会った時はいつもタナトスが奢ってくれる。申し訳ないから、とお金を何度も払おうとしたんだけど「黙って奢られろ」と睨まれてしまったので素直に最近は奢られている。
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