冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「もう大丈夫なの? 体とか心とか……一度壊しちゃうと、治るには時間が必要だって言うけど」
「はい。そんな私に気付いて、その人が手を差し出してくれたので。全快とまではいかないですけど、だいぶよくなりました。規則正しい生活と、栄養たっぷりの食事をその人が毎日与えてくれたので……それに」
岩倉さんのことを思い出し少し黙る。
同居生活を始めてからの二ヵ月半は、どこを切り取っても気持ちが温かくなることに気付いた。
岩倉さんが私に与えてくれるものは、すべてが優しい。
江並さんが「それに?」と先を促すので、笑みを浮かべる。
「仕草とか態度とか、そういうところからも岩……その人が私を大事にしようとしてくれているのが伝わってくるんです。言葉は少しきつい時もあるんですけど、たぶん、ものすごく優しい人なんです」
江並さんは、私の顔を見て少し驚いたような表情を浮かべたあと、にたぁっとした笑顔になった。
「出穂さんのそんな嬉しそうな笑顔なんて初めて見た」
顔を覗き込むようにして言われ、恥ずかしくなりながらも笑う。
「本当にすごい人なので。今だって、その人の厚意で色々お世話になっている状態ですし」
「厚意ねぇ。それだけで普通、そこまで尽くせるかなぁ。それに、体の関係がある時点で多少なりとも恋愛感情は含まれない?」
納得いかなそうに言う江並さんに、苦笑いを浮かべた。
「含まれないです。そういう行為も、その人にとっては私のための治療でしかないので」
「治療?」と、わからなそうに顔をしかめる江並さんに、うなずいた。