冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
そもそもの始まりは、引っ越してすぐの頃だった。
『寒いのか? 震えてるだろ』
夜中、突然声をかけられた。
岩倉さんの部屋にベッドはひとつしかない。それは、ひとり暮らしなら当然で、居候の私はソファで寝るつもりでいたけれど、彼はそれをよしとしなかった。
〝広いし問題ない〟と言われたベッドはたしかにサイズも大きいし、ふたりで寝ても余裕があった。
ただ、神経質そうな岩倉さんが言葉通りの他人とベッドをともにできることは意外だった。
そんな経緯から、同じベッドで眠るようになって数日が経った夜中。
『ここに引っ越してきてから、まともに眠れてないだろ。室温が合わないなら調節するから言え』
そう言い当てられた。
きっと、同じベッドだから私の体の震えが伝わったのだろう。
体の向きを変えると、岩倉さんは既に私の方を向いていた。暗闇の中でも、岩倉さんと目が合ったのがわかった。
『いえ、室温は大丈夫です。温かいですし、ベッドも寝心地いいです。でも、なんでだか心臓が嫌な感じにドキドキして、震えが止まらなくて』
布団の中。岩倉さんの手が私の手を握るので少し驚く。
岩倉さんの手をとても温かく感じた。
『冷たい手だな。こんな体温で眠れるわけがない』
岩倉さんの手が温かいだけじゃなくて、私の手が冷たいのか、と言われて気付いた。
そういえば、膝下も冷たいかもしれない。