冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「……つけてみようかな」

せっかく買ったんだし、と思い服を脱いでいく。
無意識に鼻歌が漏れたのは、下着なんて買うのが久しぶりだったからだ。

この間、岩倉さんに服やら靴をたくさん買ってもらった時も思ったけれど、やっぱり新しいものは心が躍るものだなと実感した。

着ていた服を洗濯機に入れ、購入した下着をつけ……た、はいいものの。
鏡に映る自分はあまり魅力的には思えず、苦笑いがもれた。

「どうなんだろう……」

一時期よりは肉がついたとは言え、まだ女性らしいラインが存在しない私の体には、セクシーな下着はただ浮いて映るだけだった。

鏡の前でくるりと回り、後ろ姿を確認していた時、玄関の開く音がして肩が跳ねる。

今日、岩倉さんは遅くなるって聞いていたのになんで……と、慌ててどうするかを考える。
なにか服を着ようとするも、着ていた服は洗濯機の中だ。

その間にも、岩倉さんがカギを閉めサムターンを回し、スリッパに履き替える音が聞こえてきて余計に気が焦る。

岩倉さんはいつも、帰宅後は一番最初に洗面所で手洗いをする。
玄関から洗面所までは十秒もかからないし、早く着替えないと……と、取り出した服に袖を通そうとしたところでドアがノックされた。

岩倉さんのノックは、〝今から開ける〟という合図であって、私の返事を要するものではない。
それをこの生活の中で知っていたので、せめてと思いドアに背中を向けてその時を待った。

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