冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


ドアを開けた岩倉さんは、洗濯機前でブラウスを羽織った状態で立っている私を不思議に思ったようだった。

洗面台で手を洗いながら「今から風呂か?」と聞く。

「はい……そのつもりです」
「まさか今日、その格好で行ったんじゃないよな?」
「え?」
「透けてる」

水を止め、手を拭いた岩倉さんが私の背中をブラウスの上から指先で触る。
ゆっくりと下がった指先がブラのホックの上で止まるので、体が強張った。

「あの、会社にはちゃんとインナーを着て行きました。ジャケットも脱ぎませんでしたし。今は、下着になったところで岩倉さんが入ってきたので、慌てて羽織った感じで……」
「そうか。ならいい。ところでおまえ、黒の下着なんか持ってたのか? 初めて見る」

目ざとく指摘され、心臓がギクッと音を立てた。

〝持ってましたよ〟と嘘をつけば終わる話だとはわかっていても、岩倉さんを騙すのはどんな小さなことでも気が引けてしまい……諦めてうなだれる。

「いえ……今日、江並さんと帰りにランジェリーショップに寄ったので、買ってきたんです」
「珍しいな。この間、俺がおまえに服を選んでいる時も終始興味なさそうにしてたのに」
「はい。その、〝すごい下着〟がどんなものなんだろうっていう興味から、つい」

「〝すごい下着?〟」と、岩倉さんがわからなそうに聞く。

私は背中を向けているので彼の表情はわからないけれど、きっと眉間にシワが寄っているのだろうなと想像がついた。


< 111 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop