冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
ベッドに横になった状態で目を閉じ、神経を左手に集中させる。そして、そこに熱が集まるように意識する。右手と両足も同じように繰り返す。
同居して半月ほどが経った頃、体温調節がよくできなくなっていた私に、岩倉さんが進めた自分でできるケア方法だった。
自律神経の乱れの改善が見込まれるらしく、たしかにそうしていると落ち着くし体と向き合う時間がおのずと取れるので、教えてもらった日から毎日の日課となっている。
この二ヵ月間続けたおかげかはわからないけれど、最近は体温調節もそこそこできるようになった気がしている。
同居を始めた頃のように、ひとりでバカみたいに着こむことはなくなったし、社内でも、周りの人と変わらない服装で問題なく過ごせるようにもなった。
岩倉さんが言っていたけれど、不眠や疲れやすさ、記憶力なんかも実は体の冷えが関係しているらしい。
『だから、まずは体の温かくなるものをよく食べて、湯舟にゆっくり入れ』
この部屋に来た当初、岩倉さんに繰り返し言われた言葉だ。
岩倉さんは、医者の真似事をするつもりはないとか、自分で治せと言っていたけれど、言葉とは裏腹に私の症状と私以上にしっかり向き合い、解決法を探してくれる。
だから、私にとっては岩倉さんが誰よりも頼りになる存在だ。
誰よりも頼りになる存在で……好きな人だ。