冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


岩倉さんへの恋心に気付いてからも、いちいち私がドキドキする機会が増えただけで生活は変わらない。

岩倉さんは私のそんな様子を少しおかしくは思っているようで、一度理由は聞かれたけれど「最近、感情が大きく動くようになって戸惑っている」と説明したら、「いい傾向だな」と微笑み、それ以降は特になにも言ってこない。

少し前までは自分の感情すら失っていた私にとっては、たしかにいい傾向なんだということは私自身わかる。
それだけじゃなく、二ヵ月半前は泥がまとわりついているように重たかった体が軽くなったし、霧がかかってなにも考えられなかった頭もシャキッとした。

岩倉さんが言うには真っ白だった頬に赤みも差してきたし、虚ろだった目も生気を取り戻してきたらしい。

正直、二ヵ月半前の私は鏡を見てもなにも感じなくなっていたので、記憶にもないのだけれど、岩倉さんが私を助けようと色々面倒を見てくれていた期間、私は相当ひどい顔をしていたんだと思う。

それが今更ながら恥ずかしい。

恥ずかしい、という感情も思い返せば同居を始めた頃にはなかったものだ。
なので、岩倉さんに抱かれるという行為に恥ずかしさを覚えたのは、すごい下着を購入した日が初めてなのだけれど、それ以降、岩倉さんは心なしか楽しそうに私に触れる。

恥ずかしがっているのを楽しんでいるように見え、最初は失礼ながら岩倉さんの趣味を疑った。

でも、考えてみれば当然だ。
今までが無反応だったわけではないにしても、普通の女性らしい反応を返せていたかと聞かれればきっと答えはノーだ。

だから、岩倉さんが楽しそうにするのは当然で、逆に今まで本当に申し訳なかったなと反省するばかりだ。


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