冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
私の一番の不安を声にされ、息を呑んだ。
目を逸らしたくて、でも、刻々とタイムリミットが迫っているから気になって仕方がなかった現実。
尚も見つめてくる佐鳥さんの視線から逃れるように目を伏せた。
「あ、えっと……」
なんとか微笑もうとして失敗する。
視界が動揺から揺れていた。
「そういう話、岩倉としてないの?」
「……はい」
かろうじて声になったような返事をした私に、佐鳥さんはひとつため息を落とす。
「あくまでも俺の考えだけどさ、付き合ってるわけでもない男女がずっとこのままっていうのはおかしいから、まぁ、とりあえずのけじめは必要だよね。治療って名目で同居を決めて、今はそこそこ桜ちゃんの体調も回復してきてる……ってなると、どこかで線引きしないとすれ違いも生まれるだろうし」
ドクドクと嫌なリズムで鳴っていた心臓の音が、少しずつ落ち着きを取り戻していくのを感じた。
佐鳥さんが言ったことは私も考えていたことだし、正論だ。
だからこそ、怖くて直視できなかったけれど……こうして声にされると、おかしなもので納得する。
やっぱり……と、諦めにも近い感情が心を覆う。
あがきたいとは思わなかった。
だって、面倒しかかけていない立場で、これ以上のことなんて望めない。
私に残された道は、せめてあとわずかとなった岩倉さんとの時間を大事にすることくらいだ。
「そうですよね」とうなずいた私を、佐鳥さんがじっと見つめていた。