冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「おまえの職場の件だが、完全なブラック企業だろ。早めに辞めて他を探した方がいい。再就職先はいくらでもある」
そういえば、気を失う前もやたらと私の勤務先についてなにか言っていたことを思い出し、苦笑いを浮かべた。
「でも、ブラック企業だとしても私なんかを必要としてくれているので……あ、助言はありがたく……」
「おまえ、今まで付き合った男は何人いる?」
言葉を遮られての質問に、首を傾げながら「ふたりです」と答えた私に、岩倉さんは表情を変えずに言う。
「ふたりとも、金銭面だとか女関係だとかが緩い、ろくでもない男だったんじゃないのか?」
「え、その通りです……。あの、やっぱり探偵とかエスパーなんじゃ……」
見事に言い当てられ驚いていると、岩倉さんは小さくため息を落として「違う」と否定する。
「見る限りおまえは人の顔色をうかがいすぎるし自己肯定感が異常に低い。だから、どんなひどい男や企業が相手でも、必要とされているという一点に幸福を感じて自分からは手放せない。だから外れくじを引いても捨てられない。こんなものは推理でもなんでもない」
「自己肯定感……」
「さっきへらへら笑いながら『私なんか』って言ってただろ。典型的な口癖だな」
食事を終えた岩倉さんが、箸を置く。
私も残り少しとなった料理を食べ……そして、「ご馳走様でした」と手を合わせたあと、岩倉さんを見た。