冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
いつもよりもしっかりしたメイク。ゆるくひとつにアップした髪。
黒のハイネックのニットに、マスタード色の膝丈のスカート。
岩倉さんが選んでくれたものだから、一応それなりには見えるのに、鏡の中の私は自信なさそうに眉を下げていて、見てられなくなり目を伏せる。
おかしい。
ここ最近はこんなざわざわした気持ちになることなんてなかったのに……どうして。
指先が冷たくなっていることに気付いて眉を寄せたとき、お手洗いのドアが開く。
ハッとして、もうここから出ようと振り向いたところで、足が止まった。
ドアを開けたのが御法川さんだったから。
彼女は私を見て、にっこりと微笑む。
「よかった。岩倉さんがね、気分が悪くなったんじゃないかって心配してたから」
「あ……すみません。大丈夫です」
お手洗いにそんな長居したつもりはないだけに驚いて言うと、御法川さんが笑う。
「ううん。女性のお手洗いの時間なんて計るものじゃないですよって言ったんだけどね。それに、出穂さんがお手洗いに行ってまだほんの数分なのに心配してるからおかしくなっちゃって」
「たぶん、私が場に慣れずに緊張しているのを知っていたので、それで心配してくれたんだと思います。すみません、面倒をかけてしまって……もう戻りますので」
そのままお手洗いから出ようとしたのだけれど、通せんぼするみたいに立っている御法川さんがどいてくれないので不思議に思い見上げる。
すると、それを待っていたように綺麗な笑みを向けられた。