冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
手を差し出した手前、今更邪魔だと言い出せなかったのかもしれない。
好きな人に邪魔だと思われていたとか、そういうことよりも、迷惑になり続けてしまっていることに落ち込む。
岩倉さんを好きだと気付いてからは、いつまでこの生活が続けられるのかに不安を抱いていたけれど、今はもう、一刻も早く同居を解消すべきだと考えていた。
私の感情よりも、まず、岩倉さんの希望を優先させるべきだ。
「あの、下の店舗にいけば、お部屋って探してもらえるんでしょうか。私、なるべく早くひとり立ちしないと……これ以上、岩倉さんのお荷物になるわけには……」
眉を寄せて話し出した私を、江並さんは「まぁまぁ落ち着いて」と止める。
「まず、どんなに優しくったって体まで貸さないって。それに、岩倉さんって出穂さんが思ってるほど別に優しくないと思うし……まぁ、でも、どちらにしても今日明日には解決するんじゃないかなぁ」
やけに確信めいた言い方を不思議に思い顔を上げると、江並さんがバツが悪そうな笑みを浮かべる。
「今日の午後、岩倉さん来てたじゃない? で、出穂さんが席外してるときに話しかけられたのよね。出穂さんの様子がおかしくないかって聞かれたから、〝少し元気がないですよ〟って答えたの」
「え……」
「その時はただの健康チェックだと思ったんだけど……よくよく考えてみると、岩倉さん、出穂さんの様子がおかしいって薄々勘付いてて私に確認とったのかなって。となると、岩倉さんの性格的に近いうちに話し合いの場が強制的に設けられるんじゃない?」