冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「心理学の先生とか、そういう関係の方ですか?」
「違う。俺は……」
「だったら、やめてください。頼んでもいないのに、人の心のなかにズカズカ入ってこないでください。今の状況から助けだして欲しいなんて言ってませんし、迷惑です」
言いながら、自分の言葉が胸をグサグサと刺していくようだった。
かなり失礼なことを言っている自覚はある。でも、私の気持ちを揺さぶるようなことをこれ以上言って欲しくないという思いが強かった。
グラグラするのはツラい。それが体でも、心でも。
眉を寄せた岩倉さんに、笑みを浮かべ言う。
「ほら、私、心配していただけるような人間じゃないんです。岩倉さんは私なんか気にしてくれなくていいんです。放っておけば大丈夫です。だから……」
「エレベーターで倒れたところを介抱して食事まで提供した俺相手に、随分な態度をとるんだな」
岩倉さんは、声を荒げたわけではないし、あくまで普通のトーンで言っただけなのに、ぴしゃりと上から押さえつけるような迫力があった。
部屋の気温が下がったような感覚さえしてきて、喉が鳴った。
すっと冷たく細められた目に、座っているのにたじろぎたくなる。
「す、すみませんでし……」
「俺は医者の真似事がしたいわけじゃない。おまえのトラウマだか傷だか知らないが、抉って開いて治療するつもりもない。触れられたくないのなら希望通り放っておくまでだ。そもそもそういう類のものは素人がどうにかできるものでもないだろ」