冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
居候だったのかと聞かれても……私は間違いなくこの部屋では居候でしかない。それは誰の目から見ても事実だ。
なのに、どうしてそんなに真面目な顔でこの質問をされているのかがわからず答えられない。
「大事にしたいと言ったはずだ。あれをおまえはどう理解した?」
私が黙っていると、埒が明かないと思ったのか、岩倉さんが質問を変える。
『別に傷が癒えようとそのままだろうと、俺はおまえを大事にするだけだ。だから焦る必要もないが……それでも気になるなら自分で治せ』
少し前、言われた言葉だ。
嬉しかったので、私もしっかりと覚えている。
「私に自信をつけさせるために、わざわざ言葉にしてくれたんだと受け取っています。岩倉さんはそういう言葉を口にするタイプじゃないのに……私が〝私なんか〟って思ったり言ったりしないように。言葉だけじゃなくて、岩倉さんは治療のために私をとても大事にしてくれて、感謝しかありません」
目を合わせてお礼を告げた私に、岩倉さんはややしてから「治療……?」と呟く。
ゆっくりと慎重な声には、〝ありえない〟というニュアンスが含まれているように感じ、疑問に思う。
岩倉さんが同居生活の中で私に施してくれたのは間違いなく治療だった。だから私はここまで回復できた。
それなのに、当の岩倉さんが〝治療〟という単語に引っ掛かっている状態が不思議で堪らない。