冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
さっきの〝居候〟の問いかけの時に流れたのと同じ雰囲気が流れていた。
数十秒の沈黙が落ちる。
岩倉さんは難しい顔をしたまま黙ってしまったので、おそるおそる「私、なにかおかしなこと言いましたか?」と聞くと、岩倉さんはようやく「いや」と声を出した。
そして、手のひらで額を覆い一度目を伏せ……それから何かを思い出したような顔で再び私を見た。
その顔には〝まさか〟と書いてあった。
「おまえ、まさか、俺がおまえを抱くのも治療だと思っていたのか?」
「あ……はい。私が誰かに求められていないと自分の存在意義が見つけられずに不安になることに気付いたから、わかりやすくそれを与えてくれたんですよね。岩倉さん、いつも大事に触ってくれるから、全部、私のためなんだなってわかって……すごく申し訳なかったです」
本当にすみませんでした、と続けようとしたけれど、岩倉さんがあまりに不満そうな顔をしていることに気付き、声が止まる。
怒っても見える顔と、一気に凍った雰囲気を前になにも言えなくなった私に気付いた岩倉さんは、ひとつ息を吐いてからゆるく首を横に振った。
「いや……そうだな。おまえが自己完結してややこしい結果になるタイプだとわかっていたのに、伝わっているだろうと勝手な思い込みで放っておいたのが悪かった。そのへんをハッキリさせてこなかったのは俺も同じだ」
岩倉さんは表情から怒りを消し、真面目な顔に戻る。
そして、「この際だ。ハッキリさせるか」と私を見た。
「おまえは俺をどう思ってる?」