冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「キッチンに立つ姿がカッコいいところも、穏やかな声なのに中身は辛らつな言葉も、たまに見せてくれる笑顔も、大きくて厚い手も、岩倉さんの体温も、全部……」
言うな言うな、と思うのに、気持ちが止められなかった。
こぼれるように出た「大好きなんです」の言葉。
声にしちゃダメだったのに……と、後悔と諦めのような感情が混ざるなか、全部無視して岩倉さんを真っ直ぐに見た。
一度走りだした気持ちを止めるなんて無理だった。
「大好きです。岩倉さんの好きなところを、あと五十個とか余裕で言えます。そんな相手、世界中で岩倉さんしかいません。すみません。だから……そういうことです」
申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
だって、岩倉さんは親切心でここまで面倒を見てくれていたのに、その善意を、私は今裏切ったから。
それでも伝えたかったのだから仕方ない、と割り切れるほど自分勝手にはなれなくて、じょじょに自己嫌悪が大きくなっていたとき、「そうか。よかった」と声が聞こえ、耳を疑った。
よかった……?
どういう意味で受け取ればいいのかがわからずに顔を上げると、岩倉さんは微笑んで私を見ていた。
ここまで柔らかい微笑みは珍しくて、胸が跳ねる。
「俺もおまえが好きだ。だから、今日からは居候でも同居でもなく、同棲だな」
あまりに魅力的な表情に目を奪われていたせいで反応が遅れる。
同棲、と言われた気がして「え?」をこぼした私に、岩倉さんが「なにか問題があるか?」と聞いてくるので、困惑しながら口を開く。
私の告白以降の流れが、頭でうまく処理できない。