冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「会わせたくなかったのは、御法川さんみたいに自分に自信のある女性とおまえを会わせたくなかっただけで、彼女と特別な関係だからという意味じゃない。おまえがせっかく順調に回復してきたのに、あんなすぐマウントとってきそうなやつと一緒にいさせたくなかったんだ」
「回復……」
「俺は、おまえがそのままだろうと回復しようとどちらでも構わない。そのまま受け入れるまでだ。けれど、おまえ本人からしたら回復した方が生きやすいだろう。だから、表情が出てきたことも感情が生まれたことも嬉しく思ってたところだったから、関係のない人間に邪魔をされたくなかった」
眉を寄せ、吐き出すように言った岩倉さんが続ける。
「彼女には以前、個人的に誘われたことがあるから、俺が連れているおまえに突っかかるのは目に見えてたしな。そんな爆弾ばかり抱えているような相手との食事なんて楽しいわけもないし、機嫌も悪くなるに決まってるだろ。仕事でもない場で取り繕うのも面倒だと思いそのまま不機嫌でいただけだ」
「……そうだったんですね」
「そもそも俺が迷惑がっているのに気付きながらも平気な顔で同席してくる神経の太さも、自分はなにをしても許されると勘違いしているところも好きじゃない」
よほど土曜日の件が不服だったらしい。
止まらない岩倉さんに困っていると、ひと通り怒りを吐き出して気が済んだのか、彼が私に視線を向ける。
その顔はもう、いつも通りの涼しそうな岩倉さんだった。
「そういう事情だ。なにか誤解をさせたなら悪かった。でも俺があの場で考えていたのは、おまえを傷つけてほしくないということだけだ」