冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


嘘のない瞳で告げられ、うなずく。

御法川さんも何かしらの思いがあって、私にああ言ったのだろう。
もしかしたら、まだ岩倉さんが好きなのかもしれないし、だから私を邪魔だと思って牽制したのかもしれない。

でも、岩倉さんがこう言っている以上、私は岩倉さんを信じるだけだ。

「わかりました」

だから、そう返事をしたのだけれど、岩倉さんが「他には?」とすぐに聞いてくるので首を傾げた。

「え? 他にはって、なにがですか?」
「どうせ、おまえのことだから他にも俺と付き合えないと考える理由があるんだろ。この際だ。今、解決させるから全部言え」

一瞬、横暴にも思えたけれど、これも岩倉さんの優しさなんだとわかり、じわじわと胸の奥が温かくなっていく。

私の不安を全部聞き出そうとしてくれる岩倉さんに、観念するように笑みを浮かべた。

「岩倉さんはもう知っているかと思いますが、私、なにも持っていないんです。本当に身ひとつでこの部屋に来たも同然なので……だから、付き合ったところで岩倉さんにはメリットがないなって。なにもあげられないんです。今だって迷惑かけてるだけだし、身分違いだなっていう考えは……」

言い終わる前に「俺を侮辱しているのか」と、静かに問われ肩が跳ねる。

一気に空気が凍り付き、背筋を嫌な汗が伝う。

岩倉さんはスッと目を細め、冷たい眼差しを私に向けていた。
視線が刺すようで、体が強張る。


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