冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「びっくりした……おかえりなさい」

岩倉さんは私の手から携帯を抜き取り、開いていたページを眺める。

「ただいま。バレンタインのチョコか?」
「はい。江並さんと交換しようって話になったので……すっかり忘れててギリギリになっちゃったんですけど」
「江並……ああ、職場の女性社員か。たしか先輩だったな」

岩倉さんから携帯を受け取りながらうなずく。

「はい。色々お世話になってるので、ちゃんとイメージに合ったものを選びたくて……」

岩倉さんの顔を見上げて、ふとホテルでのデザートバイキングを思い出す。

色とりどりのマカロンがあって、とても綺麗だった。
あれならイメージにぴったりかもしれない。

「あの、岩倉さんってきっと今までもバレンタインにたくさんもらってきましたよね? チョコじゃなくてマカロンとかもらったことありますか?」

私があげてきたチョコよりも、岩倉さんがもらってきたチョコの方が絶対にレベル違いで多いはずだ。
だから聞いてみると、岩倉さんはネクタイを緩めながら答えてくれる。

「いや、たぶんない。ほとんどがチョコだったな」
「そうですか……」
「感謝の気持ちを伝えるものならチョコに限る必要はないと思うが、マカロンは通常はホワイトデーに渡すものだから避けた方が無難かもしれない」

岩倉さんがキッチンに向かうので、なにか手伝おうと後ろを追いながら話す。


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