冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
たしかに、その場でチョコを受け取らなかったり、言葉で断るよりは、ワンクッションあってやんわり断れる気はする。
直接的じゃないぶん、そのあとの関係にも最低限しか響かないかもしれない。
ぐらぐらしてきたお湯のなかにパスタを二束入れながら「そういえば」と話しかける。
「江並さんが、何にしようか選んだり悩んだりする時間もプレゼントに含まれるって言ってました。……岩倉さんも、そう思いますか?」
岩倉さんが、シーフードや玉ねぎを炒めながら私にチラッと視線を移す。
「そうだな」という答えは、岩倉さんと暮らし始めたばかりの頃だったら意外に感じただろうけれど、同居期間が三ヵ月を過ぎた今は、やっぱりと納得する。
岩倉さんはいつも涼しそうな顔をしているし、仕事柄か言葉も辛らつだったりするけれど、情がないわけじゃない。
むしろ気持ちを大事にする方だ。
そういう岩倉さんが可愛く思え……そして好きだと再確認し、嬉しくなった。
「私もそう思います」
私は、そんな岩倉さんにどんなチョコを選ぼう。
好きな人へのプレゼントを選ぶ時間は、受け取る側だけじゃなく、あげる側にとってもわくわくする時間だ。
そんなことを今更思い出した。