冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


駅近くにあるデパートのイベント会場は、女性客で溢れていた。

よく漫画で目にするようなバーゲンセール状態まではいかないものの、商品をじっくり選んでいる横から、邪魔だとばかりに手が伸びてくるような混雑具合で落ち着かない。

とはいえ、これだけの女性が好きな人にチョコを渡したい一心でここにいるのだと思うとなんだかほっこりする。
二月十四日は、そこらじゅうが甘い幸せに包まれそうだ。

二十分ほど売り場を回り、なんとか江並さん宛のチョコは手にできた。
小さなエクレアをチョコやナッツ、ドライフラワーで飾り付けたもので、見た目にも鮮やかで江並さんのイメージに合う。

黒い箱に赤いリボンがかかっているラッピングもシックだけど華やかさもあっていい。

ちなみに、同じ部署の男性社員へは毎年女性社員一同から贈っていて、江並さんが代表して買い出しに行ってくれるらしい。

本来、そういう役目は入社時期が一番浅い私がすべきだと思い言ったのだけれど、江並さんは「好きだからいいの」と笑顔で申し出を断った。

私は、みんなから集めたお金で自分のセンスでなにかを決めるのは正直苦手なので、ありがたく甘えることにした。

岩倉さんへのチョコも一応探したけれど、イメージに合うものが見つからなかったため、諦めた。
岩倉さんは甘いものが苦手だから、渡したところで嫌がらせになる可能性もあるし、なにか渡すにしても違うものの方がよさそうだ。


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