冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


会場を出たところで、ふと、そういえば……と気付いた。
岩倉さんと同居して以来、こんな風に人が集まる場所にひとりで出向くのは、初めてだ。

食材は定期的に部屋に届くから買い物に出ることも少ない。それに、スーパーでもドラッグストアでも、だいたい岩倉さんが一緒で、純粋にひとりで出歩くなんて、会社とマンション間の決まったルートだけ。

しかも、会社はマンションから徒歩十分程度しかない。

ああ、そうかと思う。
そんなところでも岩倉さんに守られていたんだ。

人が多いところに出向く時は、岩倉さんは必ず一緒だった。
それはきっと、いつかのファッションビルに行った時みたいに私が恐怖に襲われても対処できるようにで、極力ひとりで外を出歩かせなかったのも同じ心配からだ。

私が外で不安定になったら岩倉さんだって面倒くさいだろうに、それでも、家にいろとは言わずに毎週のように気分転換のために連れ出してくれていたのか。

そんなことに今さら気付いて、唇を噛みしめる。

私は、見えない部分でどれだけ岩倉さんに守られていたんだろう。
今、こうして私がなにも不安に思わずにひとりで出歩けるのだって岩倉さんのおかげだ。

なんだか無性に岩倉さんになにかを返したくなり、地下にある食料コーナーに足を向けたのだった。



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