冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
二月十四日。
江並さんとチョコを交換したあと、なるべく早く会社を出た。
言うまでもなく、岩倉さんへのチョコを手作りするためだったけれど、同じ部屋に住んでいながら相手に内緒にするのはなかなか難しい。
今日が仕事だってことはわかっていたので、昨日のうちにある程度準備を済ませたくて、岩倉さんがお風呂に入っている間にチョコは刻んでおいた。
そして、朝岩倉さんが出てから、私の出勤時間までをフルに使い、クッキー生地と生チョコを作り冷蔵庫に寝かしてある。
あとは、クッキーをオーブンで焼いて、粗熱をとったあと、生チョコをはさめば完成だ。
今日の岩倉さんの帰宅時間が重要となるけれど、遅くなると聞いている。
クッキーは二十分もあれば焼きあがる。急いで作れば、後片付けを合わせても一時間かからずに終わる算段だ。
いける。
そう意気込んで帰宅したはいいものの……予定通りにことが進むなんて、そうあるはずもなく。
「ふぅん。チョコかー。俺も今日すごい数もらったよ。ホワイトデー用のお菓子、相当数準備しておかないとなぁ。でも、誰からもらったとかいちいち覚えてないし……もうだいぶ多めに用意しておいて手あたり次第配ろうかな。感謝の気持ちって言って」
私がエプロンをつけたと同時に鳴ったインターホン。
モニターに映ったのは佐鳥さんで、岩倉さんにはなにも言われていなかったものの、もう私も知り合いではあるし彼が悪い人じゃないこともわかっている。
断るわけにはいかずに部屋に上がってもらった。
私がココアパウダーを練り込んだクッキー生地を丸く型抜きしている隣で、佐鳥さんが相変わらずの明るさで話しかけてくるので手は止めずに口を開く。