冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「いいと思います。やっぱりお返しもらえると嬉しいですし。……あ、でも、返すものは色々意味があるので、気を付けた方がいいって岩倉さんが言ってました」
「あー、なんかあるみたいだね。あとで調べてみる。変な期待されても困っちゃうしね」
失礼ながら、佐鳥さんは色んな人と要領よく付き合いそうなイメージがあるけれど、結構気にするんだな、と思いながら、型抜きした生地をクッキングシートに載せていく。
佐鳥さんは私の手元を見ながら「それがクッキーになるの?」と聞いた。
「はい。180度で20分くらい焼くとクッキーになります」
「へぇ。いいね。女の子っぽくて」
予熱していたオーブンレンジに天板を入れ、二十分でスタートさせる。
そのあと、一センチの高さで固めた生チョコもクッキーよりも一回り小さい丸型にくりぬき、再び冷蔵庫に戻したところで、佐鳥さんが「ひとつ、クイズ出してもいい?」と聞いてくる。
「クイズですか? 洗い物しながらでもいいなら」
岩倉さんが帰宅するまでに証拠隠滅を図らなければならない。
どうしても秘密にしたいわけではないにしても、やっぱり驚かせたいという気持ちはある。
佐鳥さんは「全然いいよー」と笑顔で言い、クイズを出題する。
「あるところに、ハイスペックな男がいるとします。その男は身の回りのこともすべて自分でできるし高収入で見た目もいい完璧な男です。周りの女の子はそんな彼を放っておきませんが、その男はそういう女の子に見向きもしません」
使い終えた型を洗い、クッキー生地を包んでいたラップを捨てながら聞く。
なんだか岩倉さんみたいだな、と思った。