冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「態度がとても堂々としていたので。その、自己鍛錬を重ねたからこその自信の表れなんだろうなって」
「高圧的に映ったなら、それは職業柄ではなく元からの性格だ。昔から偉そうだのなんだのとよく言われてきた」
「あ、いえ、決してそう言いたかったわけではなく……」
違うとも言いきれず曖昧な答えになった私に「座れ」と指示した岩倉さんは、テーブルにコーヒーを置いたあと、「退職届の書き方、調べて書いておけ」と、今日何度目かわからない命令を下したのだった。
さっき〝高圧的〟〝偉そう〟の言葉を否定できなかった原因が、態度だけでなく命令口調にあるのだと気付いて腑に落ちる。
「コーヒーを飲みながらでいい」
それでも、鬼部長のものとは違い、上からぎゅうぎゅうに潰されている気がしないのは、岩倉さんの声が穏やかだからだろうか。
この日、おいしいコーヒーを飲みながら、岩倉さんに手伝ってもらい、初めて退職届を書いた。