冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
優しい上司に恵まれ、お昼休憩もしっかり一時間とれる。
未だにデスク脇にある電話を見ると心臓が強張りおかしなテンポで動くことはあるものの、私の再就職は岩倉さんのおかげで大成功を収めていた。
そんな岩倉さんは、私の勤める職場によく顔を出す。
顧問弁護士を務める岩倉さんの仕事内容は私にはさっぱりなので、週に数度の顔出しが、仕事なのか、取締役であるおじさんの顔を見るためなのかはよくわからない。
その度に私の様子を確認しにくるのだけれど、それは当然だと思う。
私は岩倉さんの口利きで入社させてもらった身。その私がしっかり仕事をしていないと岩倉さんの信用に関わる。
「おい。コーヒー」
パソコンに向かって仕事をしている私の左横に立った岩倉さんが言う。
腕組みをして横にビタ付けされると、左半身がピリピリとした雰囲気に刺される。
岩倉さんと出会ってもう二ヵ月が経つので、さすがに彼のこういう高圧的な部分や命令口調には慣れた。
悪気がないのもわかっているので「コーヒーですね」と言い立ち上がると、岩倉さんは私と入れ替わるように私のデスクに座った。
椅子は私の腰の高さに合わせてあるので、岩倉さんが座るととても窮屈そうだった。
「岩倉さんって、ジーンズ裾上げしなくても履けちゃう一族ですか?」
「いや。学生時代に購入した時には数センチ上げた覚えがある。他の家族がどうしているかは知らないが」
「足、長いですもんね」
「おまえは相当生地を切らないと引きずりそうだな」