冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「は? 注意されてるのに笑うって、どういう神経?」
「え、すみません……筧さんが〝ウケる〟って笑っていたので、合わせて笑った方がいいのかと思って。〝ウケる〟ってもしかしておもしろいって意味ではなかったですか? すみません、私、よくわかっていなくて……あ、〝私が代わりにやりますから〟っていう意味の〝請ける〟でしたか?」
請け負うの〝請ける〟だったのかな。
気分を害してしまったのなら謝りたいと思って言ったのだけれど、筧さんはムッとした顔で給湯室から出て行ってしまった。
私に話しかける以外のことをなにもしていなかったので、給湯室に来た目的はなんだったのだろう……と不思議に思っていた時、「ナイス撃退」と楽しそうな笑みを浮かべた江並さんが入ってきた。
よくやったとばかりに、グッと親指を立てられる。
サムズアップというやつだ。
「出穂さん、大人しそうな見た目に反してがんがん煽っていくスタイルなんだね。いいと思うよ。見ててスッキリする」
「煽る……? いえ、煽ってはいないです」
「あ、そうなの? じゃあ結果的にってだけか。それにしても痛快だったけど」
「なんだか私、筧さんに嫌われているみたいで……」
江並さんも総務部で、私に色々仕事を教えてくれる女性社員だ。
年齢は私よりも少し上で、いつも黒髪を左耳のあたりでひとつに結んでいる。
「あー……でも、出穂さんのせいじゃないから仕方ないよ。筧さん、岩倉さん狙いなんだけど、全然なびかなくてずっと指くわえてる状態なんだよね。でも、ここ一ヵ月は岩倉さんが顔を出す機会もすごく増えたしチャンスだと思ったのに、岩倉さんは出穂さんをやたら構うから八つ当たりしてるんだよ」