冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「八つ当たり……じゃあ、このコーヒーはこのまま岩倉さんに出しても大丈夫ですか?」
家ならまだしも、職場で失敗作を出すわけにはいかないので聞くと、江並さんが笑う。
「大丈夫大丈夫。そもそもそんな味の違いなんて、よほど神経尖らせてなくちゃわからないって」
江並さんの言い分に納得しながらも、安心しきれなくて曖昧に笑う。
岩倉さんはいつでも神経を尖らせていそうだし、微妙な味の違いにも気付きそうだけど、大丈夫だろうか。
そんな私を、江並さんがまじまじと見ながら首を傾げた。
「出穂さんっておどおどしてるって言うか自信なさそうな感じだけど、それって元からの性格? それとも前の会社の件があったから? ……あ、ごめん。前の会社のことは出穂さんの教育係をするって決まったときに、ちょっとだけ部長から聞いたの」
申し訳なさそうに謝られ首を横に振る。
「あ、いえ、全然……えっと、性格はそうですね。たぶん、子供の頃からこうです」
「それって、家庭に問題があったとかそういう理由?」
江並さんが心配を浮かべた表情で聞いてくる。
昔の話をすることに抵抗はないけれど、聞いた方はあまりいい気持ちにならないとわかってはいたので、少し迷ってから苦笑いを浮かべた。