冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「私、中学の頃から親戚の家に預けられてたんですけど、親戚は私のことをあまり快く受け入れていたわけじゃなくて。そういうのが態度から分かったので、なるべく嫌な顔されないようにって意識して過ごしてたんです。なので、その頃からの癖というか、そんな感じです」
「えっ、虐められてたってこと?」
驚いた顔をする江並さんに、首を振る。
「いえ。暴力とかはなかったですし」
「虐めるって、目に見える暴力だけのことを言ってるんじゃなくて、もっとこう、精神的なさ。出穂さんが居心地悪いって感じてたなら、きっとそういう空気を親族の人が作ってたわけだし、そんな中で暮らすっていうのはそれだって十分に……まぁ、いっか。今は離れて暮らしてるんだよね?」
「はい」
「だったらわざわざ掘り返す必要もないもんね。嫌な思いさせてごめんね」
明るい笑顔で謝ってくれた江並さんが「ところでさ」と話題を変える。
「気になってたんだけど、出穂さんと岩倉さんってどういう関係なの? ほら、出穂さんの入社も岩倉さんの口利きなんでしょ? あ、私は岩倉さんに恋心を抱いてるわけじゃなくて、純粋な疑問として聞いてるだけだから、身構えないでね」
筧さんも想いを寄せているらしいし、江並さんも恋愛感情はないにしても気にしているのだから、岩倉さんは相当注目を集める存在なんだろう。