冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
私のウエスト部分に指を引っかけた江並さんが、スカートの裏についているタグを見て驚愕の表情を浮かべる。
高校卒業後に購入したスーツはウエストも肩部分もガバガバでサイズが合わなくなっていた。
たしかに、ウエスト部分から指を入れてタグを引っ張り出せちゃうくらいに緩いのは問題かもしれない。
「長い間着続けてるから、生地が伸びちゃったみたいで。みっともないようなら新調した方がいいですかね」
今までの職場で働いていた時には、スーツが緩くなっているだとか新調するなんて考えにも行きつかなかった。
ただ身に着けているものという認識で似合う似合わないだとか色合いだとか、なにひとつ気にしていられなかった。
買いに行く時間もなければ、気持ちの余裕もなかったからだけど、さすがに買い替え時かもしれない。指摘されたとおり、サイズが合っていない。
今はもう土日も休めるし、これまで働きづめだったおかげで貯金もある。二着くらい新調してもいいかな、と考えていたとき。
「スーツの生地が伸びたんじゃなく、おまえが痩せたんだろ。少なくとも五ヵ月前はもう少し肉付きがよかった」
岩倉さんの声が聞こえて驚く。
振り向くと、岩倉さんは給湯室のドア枠部分に右肩を預けてこちらを見ていた。