冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


彼がここに立ち、コーヒーをドリップしている姿はとても様になる。
家事の分担はとくにしていなくて、手が空いた方がするというのがなんとなくのルールとなっている。

でも、掃除や洗濯はさせてくれても、料理だけは頑なに岩倉さんがしているので、たぶん、私の料理の腕は信頼されていないのだと思う。

ひとり暮らしを始めた頃は普通に自炊していたはずなのだけれど、気付けば栄養補助食品しか口に入れなくなっていた。

その経緯を知っている岩倉さんが私をキッチンに立たせないのは当然のことかもしれない。

仕事の忙しい岩倉さんに負担をかけてしまっているので、そこが心配ではあるものの、出てくる料理はどれもおいしいので、分担に不満はない。

買ってきた食材を冷蔵庫や野菜室にわけて収納していると、玄関の鍵が開く音がした。

十九時五十分。
早めの帰宅だ。

「おかえりなさい」
「ああ。ただいま。おまえも今帰ってきたところか」
「はい」
「みかん? 珍しいな」

岩倉さんが、ビニール袋に入りっぱなしになっていたみかんを手に取る。
たしかに、果物は岩倉さんが買ってくることが多く、私が買うのは珍しかった。

私が冷蔵庫に収納していくかたわらで、持ったみかんをしばらく眺めていた岩倉さんがそれを元の場所に置き私を見る。

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