冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「今度、駅近くにあるファッションビルにでも行くか」
「いいですけど、なにか用事があるんですか?」
「あそこなら美容関係の店がいくつも入ってる。どのメーカーのものが肌に合うのか、しっかり見てもらってから買った方がいいだろ。今週末の予定は?」

「とくには……」と答え始めたところで「じゃあ、決まりでいいな」と強引に約束を取り付けられる。

別にそれ自体はいいのだけれど、なんだか引っ掛かり岩倉さんを見上げた。

「あの、今のお話って私の化粧品について言ってましたか?」

岩倉さんは「それ以外になにがある」と不思議そうにしたあと、「今日、給湯室で他の女性社員と話していただろ」と続ける。

「給湯室で……あ、はい。江並さんと筧さんですね」
「今の時期は空気が乾燥する。どうせ、肌荒れにはビタミンCがいいだとか聞いたんだろう。果物は体にいいし、積極的にとった方がいい。でも、どうせなら外側からも保水なり保湿なりした方が効果は出やすい」

残念ながら、今日給湯室でしていた会話はそんなに女子力の高いものではない。
筧さんからは江並さんいわく八つ当たりをされただけだし、江並さんとも岩倉さんとの関係について話していただけだ。

でも、どうして岩倉さんがそう思ったのだろう……と考え、キッチンの作業台の上に転がっているみかんに気付いた。


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