冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
岩倉さんとは、一緒に住み始めてすぐに体の関係になった。
愛の告白や交際開始の挨拶があったわけではないけれど、特に抵抗はなかった。
岩倉さんは、前の会社とのことを綺麗に片付けてくれた。退職届を内容証明で送ってくれたのも岩倉さんだし、その後の会社とのやり取りもすべてしてくれた。
おかげでトラブルなく無事退職することができた。
私はあの時、本当に色々限界だったらしく、怖くて岩倉さんの部屋から出られなくなっていた。
会社の光景を思い浮かべるだけで呼吸がおかしくなり、何度も岩倉さんに落ち着かされた。
携帯が鳴るたびに体が震え声が出なくなるので、岩倉さんが代わりに電話をとってくれた。
なにか役に立てた証拠がないと自分の存在意義が見出せずパニックになる私に、簡単な家事や仕事を毎日与えてくれた。
邪魔でしかないはずなのに、毎日温かいご飯を作ってくれた。
岩倉さんは、一度も出て行けとは言わなかったし、私に早く元気になれとも言わなかった。
ただ、受け入れて、優しくしてくれた。
ああいう態度の人だから、与えてくれた優しさは素直ではないものもあったけれど、でも、たしかに優しさだった。
私の気持ちを満たすための、環境。生活。料理。
体を重ねることも、その一部だった。
岩倉さんにとっても、この時の私にとっても。