冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


二度目の出会いは、その一ヵ月後の九月初め。
引っ越し予定のマンションは、来月にはようやく入居可能になると連絡が入り、その頃には今の部屋での生活にも慣れ始めていた。

上の階は引っ越したのか、子どもの走る物音もしなくなったし、睡眠もとれていて、体調は悪くない。

ただ……気になると言えば、左隣に住む出穂のドアの開閉音だった。

音がうるさいわけではなく、問題はその時間帯だ。
朝七時過ぎには出て行き、夜は下手すれば零時を回る。

たまにではなくそれがほぼ毎日となれば、気にもなる。

生活も仕事も順調。
だが、少し出穂のことが気になりながら過ごしていた頃、帰宅途中、前を歩く女性の後ろ姿に目が留まった。

スーツ姿の女性に見覚えがある気がして、眺めているうちに出穂だと気付く。
肩を落として元気をなくしているように見える彼女は、片方の肩に鞄を、もう片方の手にスーパーのビニール袋と紙袋を提げていた。

時間は二十二時過ぎ。
彼女にしては早めの帰宅時間だった。

彼女の出勤時間と帰宅時間が気にはなるものの、声をかけるほどの興味はない。どうせ俺はすぐに引っ越すし、隣人なんかどうでもいい。

だから、そのままの距離を保ちながらマンションまで延びる道を歩いていたのだけれど、そのうちに後ろから走ってきた自転車が、彼女に近づき後ろから鞄をひったくろうとしたため、そうも言っていられなくなった。


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