冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
『おいっ!』
転ばされた彼女に駆け寄ると、それを確認した犯人は諦めそのまま逃げていく。
追いかけることは諦めて、通報して住所を伝える。
そうしている間に彼女が上半身を起こしたので、片手で背中を支えた。
『けがは? どこか痛むところはないか? 頭は打っていないか?』
『え? あ……頭は大丈夫です。他も……擦り傷程度です』
『後ろから自転車で走ってきた男が、おまえの鞄をひったくろうとした。今、通報はしたから直に警察がくる』
状況がのみ込めていない様子の出穂に、今起こった出来事を説明する。
彼女は放心状態で、それでも一応、コクコクと俺の話に頷いていた。
『ひったくり……』
『そうだ。大丈夫か?』
『はい……ぼーっとしてというか、半分朦朧として歩いていたので、ここがどこかもよくわからないままバッグを強い力で引っ張られたので……うっかり電車のドアにバッグが挟まったまま発車して、私電車に引きずられてるのかなって、一瞬思って、すごいびっくりしました』
興奮しているからか、よくわからないことを話す出穂の目の下には薄くクマができていた。
顔色が悪く見えるのは、夜だからだろうか……と考えていたところで警察が到着し、そこからは事情聴取の流れとなった。
すべてが終わったあと、駆け寄ってきた出穂は俺を見上げて頭を下げた。