冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「おまえには必要な物だろ。だったら問題ない」
正直、私から欲しがったわけでもないので私にとっても必要かはわからない……とは言えずに「すみません。ありがとうございます」と返すだけにとどめた。
岩倉さんの一歩後ろを歩きながら、ふと周りが気になった。
そういえば、ここに来たのはだいぶ久しぶりだ。
少し遠いけれど、たくさんのお店が入っているので、フリーターをしていた頃にはたまに来ていたっけ……と思い出しながらお店を眺めていて、視界に入り込んできた横顔にピタッと足が止まる。
一瞬にして血の気が引いていくのが自分でわかった。
心臓が警告音のように大きく速く動き、その音しか聞こえなくなる。
激しい鼓動が体に響くごとに目の前が暗くなっていくようだった。
視界が揺れる。
息が、苦しい。
「出穂。どうかしたか?」
立ち止まった私を、岩倉さんが振り返る。
その声にハッとして肩が跳ねた。
私の様子がおかしいとわかったからか、近づいた岩倉さんが背中を支えるように撫でるので、その腕にしがみついた。