冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


言われてみれば、引っ越しの挨拶をしに行ったときも、美形だという感想を持った覚えがあるような気もした。
引っ越してきたのは数ヵ月前なのに、ずいぶん昔のことに思える。

「あ……はい。たしか引っ越しの挨拶のときに一度……」
「あれ以降も何度か顔は合わせてる」
「え……」

思い当たる節がないだけに驚く。
岩倉さんはそんな私を気にするわけでもなく続けた。

「不躾で悪いが、おまえ、どんな仕事をしてる?」
「仕事ですか? 営業代行業、ですけど……この答え方で合ってますか?」

質問の意図がわからず聞き返す。
岩倉さんが「営業代行業?」と不可解そうに眉を寄せるので、答え方を間違えたのかとハラハラする。

「す、すみませ……」
「朝早く夜遅いだろ。あれだけ拘束時間の長い仕事はそうない」

「ああ、そういう意味ですか」と、怒らせたわけではないとホッとする。

「普通の仕事です。日中は電話でとにかく営業かけて、夜からは資料をまとめて……ってしているだけなんですけど、その量が膨大で終わらなくて。あ、でも、やっぱり音がうるさいから気になるってことですよね。すみません、気を付けます」

ぺこりと頭を下げると同時に、エレベーターが六階に到着する。
ドアが開いたのでそそくさと出ると、岩倉さんも続いた。

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