冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


その表情にも声色にも慎重さがうかがえたのは、私がまたパニックを起こさないかを危惧してのことだろうとわかり、笑顔を作った。

大丈夫だ。
ソイラテと、コーヒーの香り。そして、岩倉さんとのおしゃべりのおかげで感情の波は穏やかになりつつある。

「異常というか、過酷で……普通じゃなかったんだなって思います。前の職場にいるときも、最初の方はちょっとおかしいなとは思ってたんですけど、そのうちになにも考えられなくなって……ただ、出社しなきゃって、それだけになってました」
「風呂に入って、初めて体が冷えていたことに気付くことがある。それと一緒だ。だから、おまえが前の職場を異常だったと自覚できたのなら、完全にそこから抜け出せたと考えていい」

岩倉さんの言葉がまるで〝だからもう大丈夫だ〟と言っているように聞こえた。
じわじわと内側から温まるような優しさに、自然と笑みがこぼれた。



「服を見る。付き合え」
「あ、はい。わかりました」

そんな会話から、仕切り直しのショッピングがスタートする。

服……岩倉さんが好むようなブランドがここの建物に入っていただろうか。
普段、仕事で着ているスリーピースも、私服も、お風呂上りに着ているルームウェアでさえも値が張りそうなものばかりだ。

もちろん、ここにもびっくりするような値段の服を取り扱っている店舗もあるものの、基本的にレディース服ばかりで、メンズ服は数店舗しかない記憶がある。

だから、どんなお店を見るのだろうと不思議に思っていたけれど、始まってみれば岩倉さんが入るショップはレディース服や靴を扱うところばかりで……。

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