冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「いっしょだったけど、どこかにいっちゃったから、いまはいないの」
「そっか。どこまで一緒だったか覚えてる?」
「えっと、あそぶばしょであそんでて、それからほんをみにいこうねっていって、ほんみてたら、ママがいなくて……」
「本屋さんかぁ。じゃあ、一緒に本屋さんまで戻ってママ探してみようか」
たしか、総合カウンターは本屋の向こうだったはずだから、本屋で探してみて見つからなかったら行けばいいと思い、誘う。
男の子が「うん」と笑顔になったことに安心しながら立ち上がると、いつの間にか岩倉さんがうしろに立っていた。
「迷子か。本屋は向こうだったな」
岩倉さんが歩き出すので、その後ろに続く。
私は男の子と手を繋いだ状態で、岩倉さんはひとり。もともとの足の長さも違う。それなのに、岩倉さんとの距離が離れないのは、歩くスピードを私たちに合わせてくれているから。
それがなんだか可愛かった。
結局、本屋の入り口で男の子が「ママ!」と女性に飛びかかるように抱き着き、女性もすぐに「みーくん! どこ行ってたの?!」と抱きしめ返したので、迷子騒動はスピード解決となった。
お母さんが何度も〝お礼を〟と言ってくれたのをなんとか断り、帰路につく。
岩倉さんの運転する車内は、少し遠回りして寄った大きなパン屋さんで買ったパンの香りで溢れていた。
お腹空いたなぁと思い、時間を確認すると十三時前だった。
「子どもの扱いに慣れているんだな」
運転しながら言われる。