冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「そうですか?」
「ああ。すぐに泣き止んでた。迷子なんて本人は不安で仕方ない状態だろ。下手に話しかければ余計に泣き出す可能性も高い」
「そうですね。私も泣かれちゃわないかなってドキドキしました。でも、繋いだ手が小さくてあったかくて、すごく可愛かったですよ。今まであまり考えたことなかったですけど、結構好きかもしれません」
というよりも、嫌う要素がない。
それでも自分の子となると、可愛さよりも大変さが増すこともあるのかな……と考えていると、不意に岩倉さんが「そうか。わかった」と言うから首を傾げる。
いったい、何に対しての了承なのか。
「なにがわかったんですか?」
「子どもが好きなんだろ。覚えておく」
普通の顔でさも当然のように言われたので、ああ、なんだ。ただの好みの問題の話だったんだっけと思い至る。
「ブルーチーズが嫌いってことも、忘れないでくださいね」と念押しで言うと、岩倉さんは口の端を上げ「どうだかな」と意地の悪い返しをした。
でも、岩倉さん自身もブルーチーズは苦手そうだったから、きっともうブルーチーズがあの部屋の敷居を跨げる日はこないと思う。
「そういえば、職場では変な嫌がらせはされてないか? 少し前、筧とかいう女性社員がやけにおまえに突っかかるという話は、叔父から聞いてる。その辺、おまえは一切俺に言ってこないがどうなってる?」