冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
運転しながら岩倉さんがじろっと視線だけこちらに向けるので、びくっと肩が跳ねる。
どんな些細なことでも報告する、というのが再就職先を見つけてもらう条件だった。
それは覚えているけれど……でも別に、筧さんとのことは大したことではないと私の中では判断していたから言わなかったまでの話だ。
……けれど、運転席から凍えるようなオーラを感じ、とりあえず謝ることにする。
あれくらいでも報告必須だったらしい。
「すみません……。嫌われてるかなってくらいだったし、仕事に支障はないので別にいいかと思って気にしていませんでした」
「なにかされたのか?」
「いえ。場所問わず『なんでこんなこともできないんですか? 普通にひくんですけど』みたいなことを、よく笑いながら言われるくらいで、実質的な被害はなにも」
安心してほしくて微笑みを作ったのに、岩倉さんは不満そうに眉を寄せた。
「そもそもそれ自体がもう被害だろう……まぁいい。俺が紹介した職場で問題を起こすべきではないと考えて我慢しているなら、そんなことは気にしなくていい。理不尽な扱いを受け入れる必要はない」
「でも、本当にそこまで気にもしていないので……それに、岩倉さんのことがなくても、どっちみち言い返す性格ではないので大丈夫です」
おおごとにするくらいなら、笑って謝ってすませた方が私自身気が楽だ。
そう笑った私に、岩倉さんはひとつ息をついてから聞く。