冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「あの、どうぞ。岩倉さん、すぐに帰ってくるそうなので」

コーヒーを出しながら言うと「ありがとう」とニコッとした笑顔が返ってくる。

「えーっと、なにちゃん?」
「あ、自己紹介もしないですみません。出穂桜といいます」

ぺこりと頭を下げたあと、佐鳥さんの向かいの椅子を引き腰を下ろす。
「桜ちゃんねー」とニコニコした顔で言った佐鳥さんが、思い出したような顔で私を見た。

「あ、もしかして、二、三ヵ月くらい前に倒れた子?」

どうして知っているのかがわからないまま「え、あ、はい」と頷くと、「あー、やっぱりそういうことね」と納得された顔をされた。

「いや、あの時、岩倉から電話かかってきて対応したの俺なんだよ。『救急性があるか教えろ』とか言われてもさ、俺だって電話説明だけじゃ難しいよ。そもそも俺、外科だしね。しかも美容の方の」

『通路で意識を失ったんだ。俺の方に倒れ込んできたおかげで、床にどこかを打ち付ける前に支えられたからよかった。脈も呼吸も正常だし、知り合いの医師に電話で確認したが、事情を説明したら恐らく過労だとか栄養失調あたりだろうってことで救急搬送は見送った。必要ならすぐに電話してやるが、どうする?』

そんなことを言われたのを思い出し、ハッとした。

「あ、あの時、岩倉さんが言ってた〝医師〟って、佐鳥さんだったんですね。ご迷惑をおかけしてしまい、すみませんでした」

頭を下げた私に、佐鳥さんが笑顔を浮かべる。


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