冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


「いやいや、全然。でもさ、岩倉から電話がかかってくることなんて普段ないから何事だよってかなり驚いて、いざ出てみたら声がやたらと慎重でさー。しかも、よく知りもしない隣人が倒れてーとか話し出すから、別の意味で驚いたけどね」
「そうですよね……。岩倉さんって、誰かが倒れていたとしても放っておきそうなイメージありますし、よく私の面倒見てくれましたよね」

不思議に思って言うと、佐鳥さんは「ははっ」と笑う。

「いや、さすがに救急車呼ぶくらいの情けはあるよ。多分だけど。っていうか、一緒に暮らしてるのに岩倉のイメージ悪すぎない? もしかして、俺みたいに結構ひどく扱われてる感じ?」
「いえ。全然ひどくなんかないですし、優しいです。……ただ、たまに怒らせると、殺されるんじゃないかと思うほど空気が凍る瞬間はあります」

直近で言えば、私が筧さんに悪口を言われた報告を怠ったときがそうだ。
あの時、車内の空気はたぶん半分凍っていた。

「それ、すげーわかる。腕組みして横に立たれた日には〝あ、これ死ぬわ〟って思うもん」

佐鳥さんには悪いけれどその絵が浮かぶようで、思わずクスクスと笑ってしまう。
「まぁ、基本的には悪いヤツじゃないんだけどね」と佐鳥さんが続ける。

「ただ、警戒心はやたら強いし、部屋に上げる人間ってあいつの中で相当選別されてると思うんだよね。それなのに桜ちゃんと同居してるっていうのは正直驚いたなぁ。あいつが誰かと暮らせるとは思わなかったから意外ではあるけど、親友としては嬉しいかな」

〝親友〟という言葉にハッとする。
大学時代から友達の佐鳥さんなら……と思い口を開いた。

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