冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「情けないんですが、引っ越してきてしばらくは頭も体もあまりまともじゃなかったので……岩倉さんがくれる厚意を、とくに疑問を抱くこともなくされるがまま受け取っていて。でも、体調が回復して色々考える余裕が出てきたら、あれ、なんか今の生活おかしいなって気付いた次第です」
私が、なにかおかしいかも?と思い始めたのは、再就職して落ち着いた頃だから年末あたりだ。つまり、三週間ほど前。
それまでなんとも思わなかった自分は本当にどうかしていたのだと思うけれど、今更そこを考えても仕方ない。
ようやく現状を冷静に見ることができるようになったことを、まず喜んで岩倉さんに感謝すべきだ。
「なるほどね」と納得したように言った佐鳥さんが、頬杖をついて私を見る。
「たしかに岩倉は誰彼構わず面倒は見ない。桜ちゃんの言う通り、他人とは距離を置いた付き合いを好むし、トラブルに自分から首を突っ込むなんてまずしない。だから、俺からしてもこの同居は不思議案件ではあるけど……でも、男と女だからなぁ。そういうこともあるんじゃない?とは思うよ」
「男と女……」
「うん。単純に桜ちゃんが好みだったんじゃない? 俺だって、タイプの子には優しくするしね」
思わず眉間にシワが寄っていた。
だって、タイプなんて……あんな、本気で口説けば誰でもおとせそうな岩倉さんのタイプが私みたいな普通の女なんてこと、あり得るのかな。
雑誌で人気のモデルと並んだってまったく見劣りしないくらい美形の岩倉さんなのに?
どうしても納得ができずに首を傾げていると、じろじろと私の顔を見ている佐鳥さんに気付いた。