冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「おい。いい加減、起きろ。風邪引いて体調崩したらどうする。仕事を休みたくないんだろ」
『せっかく紹介してもらったので、岩倉さんの顔に泥を塗るような真似はしたくありません』
働き始めて半月ほどが経った頃、頭痛で涙目になりながらも出勤すると言って聞かないこいつが言ったことだ。
結局、頭痛薬が昼過ぎに効き一日勤め上げて帰宅したが、こいつのせいで何度か叔父に確認の電話を入れる羽目になった。
『よほど可愛がっているんだなぁ』とでかい声で笑った叔父の声は思い出すたびに頭にくる。
「出穂」
俺の声にも起きる様子を見せない出穂の肩を軽く揺らす。
一時期よりもやや健康的になった体だがまだ弱々しい。それでももう、あんな顔色で倒れることはないだろう。
ここまで俺が回復させたのだと思うと気分がよかった。
「出穂。風呂入ってからベッドで寝ろ」
よほど疲れているのか、眉をしかめながらもまだ寝続けようとする根性に感服する。
ここまで深く寝ているのなら、このまま起こさずにベッドに移して明日の朝風呂に入った方がいいかもしれない。
出穂を横抱きにして寝室に運ぶ。
この、出穂を思っての行動が、翌朝の喧嘩の種になるとは思ってもみなかった。