冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
「どうして起こしてくれなかったんですか……」
朝、そんな声で起こされる。
時計は五時半。毎朝のアラームよりも三十分早い時間だった。
カーテン越しの空はまだ暗い。
ベッドサイドに立ちすくんでいる出穂はもうシャワーを浴びたようで、ブラウスにスカートといういでたちだった。
上半身を起こして、床に足をつきながら「起こしても起きなかったんだろ」と言うと、すぐに反論が飛んできた。
「それでも、起こしてください。叩いてでも踏んづけてでも! 今後は絶対にそうしてください。重ための風邪だろうとインフルエンザだろうと、絶対に起こしてください!」
珍しく必死に訴えてくる姿に、思わず声を失う。
出穂がこんなふうに俺に強く出るのは初めてだった。
いつもだったら〝でも〟だのなんだの言いながらも、最終的には俺に強く言えずに引き下がるのに、今回のなにが彼女の琴線に触れたのか。
夜起こさずにベッドに運んだ、という行動がそこまで許されない行為だとは理解できない。
「なにが気に入らなかったんだ?」
ベッドに座ったままの状態で聞く。
俺の前に立っている出穂を見上げて答えを待っていると、そのうちに彼女は眉をギュッと寄せて目を伏せた。