冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す
立ち上がり、出穂の頭にポンと手を置く。
彼女の髪はほとんど乾いていたけれど、ところどころまだ水分が残っていた。ドライヤーのかけかたが甘い部分はあとで注意した方がいいかもしれない。
出穂はまだ全快とは言えないし、抵抗力の面で不安が残る。
風邪を引いてからじゃ遅い。
身長差が逆転したため、今度は出穂が見上げる番だった。
その瞳にはまだ不満が滲んでいて、その様子を見て思わず頬が緩む。
「なんで笑うんですか?」という出穂に、口元を片手で覆って隠した。
「いや。考えてみれば、おまえが俺に対してここまで主張してきたのは初めてだと思っただけだ。内容はくだらないにしても、悪い傾向じゃない」
それを聞いた出穂は情けないような顔になり……それから、一歩近づき俺の胸の頭をつけた。
男女の関係になってから二ヵ月が経つが、彼女から俺にくっついてくるのは珍しい。
抱き締め返して「どうかしたか?」と聞くと、出穂がぼそぼそと言う。
「岩倉さんは、今の話をくだらないことって思ってるのにちゃんと私の相手をしてくれたり、喧嘩してるのに私のことを考えてくれたりしてて、そういうところがなんだかすごく悔しくて……でも、嬉しくて。抱き締めたくなりました」
背中に回した腕に力がこもる。